“切らない”選択のその後――希望につながった再生医療との出会い
~回復のきっかけは、思いがけないところから~

「安心できる医療②」でご紹介した顔面痛の影響で、当時は話すだけで激しい痛みに襲われ、医療関係の方から「話さなくてすむ工場などの作業での仕事がよい」とのご助言をいただき、工場勤務をすることにしました。
工場作業の厳しさは、単純な動作であっても、ベルトコンベヤーなどを通して、それを数千、数万回と繰り返さなければならない点にあります。
力の要る作業であっても数千回と繰り返すこともあり、普段使わない部分の筋肉を酷使する作業は特に危険で、右腕にしびれを伴う強い痛みが現れました。
動かすたびに激痛が走り、帰宅後にはさらに悪化して、右腕が痛みで動かすことが難しくなりました。
整形外科では「右手腱鞘炎」と診断され、1か月療養を取るように指示がありました。
また、装具の装着とシップを張って「なるべく動かすように」との指導を受けましたが、実際は日に日に強い痛みとしびれでほとんど動かせなくなりました。
何より深刻だったのは、症状が日ごとに悪化したことです。
腱鞘炎による右腕の痛みに加え、人差し指も動かせなくなり、約2か月後には人差し指にうっ血が見られるようになりました。
うっ血がひどくなり、症状の悪化が続いてしまったため、6か月後にはある医師からは、「これ以上悪化したら、責任を持って切除しましょう」と親切心からおっしゃいました。
ただ、私は「どうにか治したい」という思いでいっぱいでした。その想いと、医療機関側という見解との間に、すれ違いが生じていました。
リハビリでも改善の兆しが見えず、出口の見えない状況に絶望しかけていた頃、知人の弁護士に相談することにしました。
その弁護士の方は、これまで多くの労災や特殊な事故案件に関わってこられた方で、非常に的確で誠実なアドバイスをくださいました。
「もし治すことをあきらめているのなら、再生医療の可能性も検討してみては。まだ間に合うかもしれない」と。
既にケガから半年が経過していた私は、わずかな希望を抱き、その方から大学病院の再生医療に携わる鍼灸師の方をご紹介いただきました。
治療内容は、鍼(はり)と電気などを用いた治療でした。
はじめに説明を受けた時に鍼灸師の方がおっしゃったのは、「ケガから処置が早いほど良いけれど、遅くなってしまった場合は、治療もできなくなってしまうこともある。まだ間に合うからよかった。」と言った旨のことを伝えられました。

最初の数回は劇的な変化が見られなかったものの、次第に指が少しずつ動かせるようになり、リハビリも進むようになっていきました。
鍼灸師のアドバイスに従い、風船を握る動作を繰り返す、歩くときに「グー・パー」の運動をするなど、小さな積み重ねを3~4か月かけて続けた結果、機能が徐々に回復していきました。
最初に診てくださった整形外科の先生にも経過を報告したところ、「うっ血が引いてよかった」と一緒に喜んでくださり、1年後には仕事復帰できるまでに回復しました。
ただし、以前のような工場作業には戻れる状態ではなく、資格を取得して事務職への転向を目指すことにしました。

その後も鍼灸治療と自主的なリハビリを続け、完全ではないものの、手や腕の動きは4~5年をかけて十分に改善されました。
さらに、ピアノをリハビリの一環として始めたことが、大きな転機になりました。
もともと歌うことが好きだったのですが、顔面痛で歌うのがつらくなっていた私にとって、ピアノは新たな音楽のかたちでした。

最初はうまく弾けず苦労しましたが、「リハビリとして続けなければ」という気持ちで地道に続けていくうちに、次第に音楽そのものの喜びが生まれてきました。
少し余談にはなりますが、病気やケガで心が沈みがちなとき、音楽は思いのほか大きな心の支えになるということを、身をもって実感しました。
おわりに
ひとりで抱え込まないでください。


今回のように、ケガや病気で回復が思うように進まないときは、「もしかしたら他に方法があるかもしれない」と視点を変えてみることも大切です。
私は、多くの方に状況をお話しする中で、思いもよらないところに道が開けました。
特に、医療に精通した弁護士の方が治療方法の情報を持っておられたことは、大きな転機となりました。
今では、市販の「ひばり(ミニ鍼)」を、過去に鍼灸師の先生に打っていただいた場所に貼ることで、体調管理を続けています。
ただし、針の扱いは非常に繊細で危険も伴うため、専門家の指導を受けることをお勧めします。
どうか、一人で悩まずに、信頼できる医療関係者や法律の専門家に相談してみてください。
解決の糸口は、案外、医療の「外側」から情報がもたらされることもあるかもしれません。

本記事の内容は、あくまでも私自身の体験に基づく一つの可能性としてご紹介したものです。
参考程度にご覧いただき、ご自身の状況に合わせてご判断いただければ幸いです。
つらい症状に悩まされている方が、一日も早く回復されることを心よりお祈り申し上げます。



















